試合は冬高の圧勝に終わった。

それを見届け、喜びを分かち合った二ノ宮は、今しがた監督に連れられて病院へ向かったばかりだ。

本来なら、二ノ宮だけで病院に行けば問題ないのだけど、彼の場合はスカウトの件もあるから、監督がきちんと医師の診断を聞きたいのだそうだ。

本当は私も付き添いたかったけれど、まだ掟のことで納得のいかない部員がいる状況で行くわけにはいかず。

私は、部のみんなと共に、観客のいなくなった体育館に残って片付けを始めていた。

文化祭実行委員の人たちも手伝ってくれたおかげで体育館は予定よりも早く綺麗になり、部員は着替えに部室に戻る。

私はそれを見送り、ひとりきり、ガランとした観客席に腰を下ろした。

そうして、思い出す。

試合終了の瞬間と、直後の三輪君のことを。


館内に試合の終わりを告げる笛の音が鳴り響いた時、三輪君は笑っていた。

䋝田先輩に頭をくしゃくしゃに撫で回されても文句を言わず、嬉しそうに。

バスケが楽しいという気持ちが見ているだけでも伝わってきて。

そして、三輪君の瞳が、二ノ宮の姿を捉えると。


一緒のためらいの後に、申し訳なさそうな顔で、頭を下げた。