「ちーくん何言ってんの。今までのこと考えたら」

「今までとこれからは違う。これからは、三輪の努力次第で変われる」


結城の言葉を遮って、二ノ宮は、前向きな姿勢を三輪君に求める。

けれど、三輪君は小さく頭を振って呟いた。


「なんの……つもり?」


少し震えるその声に、二ノ宮は落ち着いた声で答える。


「お前の上手さを知ってるからだよ」


そして、続ける。


「努力も、悔しさも、俺が全部見て、受け止めてきたから。だから、お前のことよくわかるんだ」


今は俺のことを忘れて、お前らしくやってみなよ。

そう二ノ宮がら伝えれば、三輪君は視線を落とす。


「忘れろって、そんなの……」


無理だと続けんばかりの戸惑いを見せる三輪君に、たまらず私も声をかける。

多分、これがチャンスだと思うから。

彼が、少しでも前を向く為の。


「じゃあ、忘れないで。今の二ノ宮の言葉も、信頼も、私が応援してるってことも」


彼がしてしまったことは消えない。

二ノ宮の記憶からも、私の記憶からも。

そして、三輪君の記憶にもきっと、この先も強く残るだろう。

でも、そのせいで明日への道を閉ざすことはしなくていい。

諦めない心があるなら、どんな形でも前を向いて進むべきだ。

笑顔になれる、少しでも満足のいく自分になるために。