館内では、丁度女バスの試合が始まったところで、私たちは男バス用に用意された2階席の座席に座る部長に声をかける。

そして、隅へと移動すると、二ノ宮が言った。


「三輪と揉めたんですけど、大丈夫です」


──え、と。

驚き私は横に立つ二ノ宮を見上げた。

私はいい。

私のことは言わなくてもいいけれど、二ノ宮は椅子で殴られている。

それなのに、報告しないの?

彼の瞳は真っ直ぐに一条部長を見ている。

……三輪君の為?

話せば、もしかしたら三輪君が退部になる可能性もある。

だから、話さないの?

……だとすれば、私は二ノ宮の考えを尊重するまで。

私も二ノ宮から部長へと視線を移し、頭を下げた。


「お騒がせしました。これから着替えて、支度してきます」

「うん。大事に至らなくてよかった。本当に」


部長はそう溜め息を零し、困った顔で観客席に座る三輪君に視線をやる。

ここからでは後ろ姿しか見えないけど、三輪君は、ずっと肩を落とし覇気がないように見えた。

多分……自分のしたことに、ショックを受けているのだろう。

まあ正直、三輪君がみんなのところに戻ってるとは思ってなかったので、見つけた時は驚いたけど。

動揺しているからこそ、普段の通りに動いているのか。

とにかく、私には到底理解できそうになかった──。