春の柔らかな風が二ノ宮のウェーブがかった髪を揺らした。

彼は少しくすぐったそうに目を細めてから、その奥二重の瞳をふと私に向けて尋ねる。


「新しいクラスどう?」


先週から新学期がスタートし、学年がひとつ上がると同時にクラス替えも行われた。

私、桃原 美羽(みう)は2年D組。

片想いの相手、二ノ宮 千尋(ちひろ)は2年B組。

残念ながら、今年もまた二ノ宮とは同じクラスにはなれなかったけど、幸い部活が一緒なので我慢だ。

そして、来年こそはと願ったことを思い出しながら彼の質問に答える。


「賑やかだよ」

「それ、結城(ゆうき)がいるからじゃなくて?」

「その通り」


結城 太一(たいち)は私や二ノ宮と同じバスケ部員。

まあ、私はプレイヤーではなく男バスのマネージャーだけど、それはさておき、結城はお調子者という言葉がピッタリな男子だ。

部内でもムードメーカーで、彼がいると笑いが起こったりして本当に賑やかになる。


「二ノ宮のクラスは?」

「うちは、まあ普通かな。でも、寂しいよ」

「結城がいなくて?」


1年の時、二ノ宮と結城は一緒のクラスだった。

仲も良く見えるし、ちょうど結城の話をしていたから、てっきり彼のことだと思ったんだけど……


「桃原がいなくて、だよ」

「えっ……」


二ノ宮は、女子からウケのいいキュートな笑顔を浮かべ、私の名前を出した。