何が起こったのか。

肘を抑える二ノ宮から、急ぎ視線を動かして三輪君を見れば、呆然と立ち尽くす彼の手には折り畳まれたパイプ椅子があった。


「み、わ……君……」


背を丸める二ノ宮と三輪君が持つ硬い椅子。

もしや。まさか、と。

混乱しながらも名を呼ぶと、三輪君はビクッと肩を跳ねさせてから、パイプ椅子を床に落とした。


「あ……あ。ぼ、く……何を……」


衝動的にやってしまったのか。

三輪君はようやく我に返り、信じられない様子で目を泳がせている。

やがて、この状況に耐えきれなくなったのか、逃げるように部室を飛び出してしまった。


「三輪君!」


呼び止めようと声を荒げれば、二ノ宮の声に制止される。



「いい……行かせてやって」


いつもよりも弱い声で言って、痛みに顔を歪めた二ノ宮の隣に膝をつく。


「肘見せて」


バスケができないほどの怪我なのか。

もしそうであれば、どうしたらいいのかと不安に心が押しつぶされそうになる。

とにかく、まずは状態を確認しようと手を伸ばしたけど、二ノ宮は頭を振った。