「痛めたの?」

「突き指したみたい」

「大丈夫?」


声をかけながら膝をつき、コールドスプレーを痛めたという人差し指に吹きかける。

どうやら曲がるようなので、今後のプレイに支障はなさそうだ。

ホッと胸を撫で下ろすと。


「まだ、いけたのに」


やはり交代させられたのが納得いかないようで、三輪君はふてくされながらコートを見つめながら声を零した。

コートでは、ちょうど䋝田先輩がレイアップシュートを決めたところだ。

手当てを終えたところで、再び三輪君が呟く。


「今の、もったいない」


一瞬、䋝田先輩のプレイに対して言葉かと思ったけど、どうやら違うようで。

彼の瞳は二ノ宮に向けられていた。


「僕の方がうまくやれるのに」


ああ、そうか。

三輪君にとって、同じプレイスタイルの二ノ宮はライバルになる。

部長から聞いた話では、三輪君は小学生の頃からバスケをしていて、中学ではずっとレギュラーの座を獲得し続けてきたらしい。

けれど、うちにはすでに二ノ宮がいる。

三輪君が常に試合に出るには、二ノ宮を超えなければならないのだ。