「そ、ういうことじゃなくて、二ノ宮が辛い想いをするのは」

『俺だってそうだよ。桃原が辛いのは嫌だから頑張ってる。その為なら無理だってする。今は苦しいのなんて、そんなの当たり前だろ』


刺々しい口調で言われ、私は口をつぐんだ。

苦しいのは、当たり前?

確かに、生きていれば苦しいことにぶつかるかもしれない。

この先、悩んで苦しむことはあるかもしれない。

だけど。


「当たり前じゃないよ。掟に逆らって付き合って、バレて嫌がらせにあうのは、当たり前じゃない」


例えバレても、人や状況が違えば嫌がらせに合うことはないかもしれないのだ。

䋝田先輩のようなキャラなら、いつかやると思ってたなんて非難はされても、嫌がらせには合わないかもしれない。

二ノ宮には三輪君との確執があり、タイミングの悪いことにやる気のない後輩もいて。

それにより、部の空気が悪いとイラつく部員がいる。

悪循環に陥っているこの状況は、決して当たり前ではないのだ。


「当たり前じゃないのは、大変で辛い。だから、いつか倒れてしまう前に吐き出さないと。信じてるよ、二ノ宮のこと。でも、私は苦しむ二ノ宮に甘えた恋なんてしたくない。二ノ宮と支え合う恋がしたいよ」


それが、近いうちに終わりを迎える恋だとしても。