息することさえて忘れていた私の耳に、再び一条部長の声が届いた。


「けどね、今二ノ宮が抜けるのはうちにとってかなり痛いんだ」


だから退部はさせたくない。

そう告げると、部長は瞳に厳しさを宿す。


「でも、なんの処分もないんじゃ、みんな納得しないだろうから……どうするかは少し考えさせて。みんなにも意見を聞いてみるよ」


その言葉に、私と二ノ宮は頷くしかなかった。

けれど、安堵もした。

部長は二ノ宮を必要としてくれてる。

ならば最低でも二ノ宮だけは残れるのではと思えたから。

でも、隣に座る二ノ宮を盗み見れば、彼は思いつめた顔で床に視線を落としていて。

どう声をかけるべきか悩んだ矢先、二ノ宮が顔を上げた。


「桃原は? 俺がもし残れたとして、桃原はどうなるんですか?」


──ああ、そうか、と。

私は眉を情けなく寄せ、唇を震わせた。

二ノ宮は私のこと案じてくれていたのだ。