そして、そのまま続けるのは、部長の正直な声。


「でも、今回のことで、やっぱり部内の恋愛はダメだろうって空気になってるから、今みんなに聞いても総意で掟廃止にはならないと思う」


……掟廃止。

二ノ宮を好きになってから何度か願ったことのあるその響き。

これがなければ、もっと希望を持って片想いができた。

これがなければ、もっと素直に好きだと伝えることができた。

これがなければ、今、こんなに苦しみ、迷惑をかけることもなかった。


どうしてうまくいかないのだろう。

私はただ、二ノ宮と普通に恋をしていたいだけなのに。

どうして望んでしまうのだろう。

想い合えているだけでも奇跡だと感じているのに、掟がなければ、と。

覚悟していたはずだった。

けれど、こうなってわかった。

覚悟をしたつもりでいただけ。

強がって、不安を隠して進んでいただけなのだと。

恋心で、目隠しをして。

もしもの未来を見ないフリをして。

悪くなる一方の状況に立たされ、もっと慎重に、よく考えて振る舞うべきだったと、底なしの後悔の波に飲まれていく。