練習後の部室にマネージャーである私が入ることはあまりない。

午後練が終わると、基本的にマネージャーは教室で着替え、そのまま部室に寄ることなく帰宅するからだ。

例えば、何か仕事について相談があるとしても、大抵は体育館で済ませている。

けれど、今日は違った。

私と二ノ宮を部室に迎え入れた一条部長は、小さな笑みを浮かべる。


「残ってもらってごめんね。とりあえず座って」


室内には、私が午後練中に干したタオルやゼッケン入りのビブスが下がっていて、そこから香る爽やかな匂いを鼻で感じながら、二ノ宮とベンチシートに並んで座った。

部長は、私たちの前にパイプ椅子を置くと向かい合わせに腰を下ろす。

呼び出された理由は、私も二ノ宮もわかっていた。

だから、話始めで部長が「監督にも一応報告したよ」と口にしても、何をですか、なんて疑問をぶつけることもない。

二ノ宮は静かな声で問いかける。


「監督はなんて?」


それは、落ち着いた……というより、答えを悟っているような雰囲気で。


「掟を作ったのは数年前の部員たちの総意だから、掟を無くすのなら総意が必要だろうって」


答えた部長もまた、丁寧に、けれど簡潔に伝えてくれた。

監督の言葉を。