衝撃と痛みを覚悟して。
だけど、それはやって来ることはなく……
代わりに、私の肩がグッと誰かに抱かれる。
「桃原に手ぇ出すんじゃねえよ」
怒りを滲ませた低い声に瞼を開けば、右手で私を抱き、左手で後悔の拳を受け止める二ノ宮がいた。
「にの、みや……」
見上げるその横顔に、笑みは一切ない。
瞳は静かに怒りを宿していて、結城と同様、普段怒ったりしない二ノ宮の滅多に見れない姿に、私はただ戸惑ってしまう。
言葉遣いもまるで別人のように乱暴で、でもそれが逆に彼が本当にキレてるんだと知らせていた。
後輩の手を払い除け、二ノ宮の視線が私へと注がれる。
その瞳は打って変わって急に柔らかさを醸し出し、私は安堵した。
「大丈夫?」
心配そうに見つめる彼に私がコクコクと頷くと、安心したように微笑まれる。
そこに䋝田先輩が仲裁に入ってきてくれて、後輩たちは部長の前へと連れていかれた。