日曜日の午後。

まだ日が高いこの時間は、いつもなら二ノ宮の部屋でまったりしている時間だ。

でも、今日は緊急事態発生で、私は早々に帰り支度を始め玄関でお気に入りのショートブーツに足を通していた。


「ごめんな、送っていけなくて」

「大丈夫。それより、急いで支度して行ってあげて」


二ノ宮には、年が離れたお姉さんがいる。

そのお姉さんは現在妊娠中らしいのだけど、どうやら産気づいたようで今から産院に向かうのだという連絡がさっきお姉さん本人からきた。

ご両親も旦那さんも仕事中なので連絡がつかないのだと、弟である二ノ宮に助けを求めてきたらしい。

とりあえず、誰か来るまで側についてあげた方がいいだろうと、二ノ宮はこれから産院に向かうことになった。

玄関の扉を開けると爽やかな秋の外気が私を迎える。


「帰り、気をつけて」

「二ノ宮も、急ぎ過ぎて転ばないようにね」


冗談めかして笑うと、二ノ宮も笑って。


「あ、桃原、忘れ物」


思い出したように声にしたかと思えば、彼は雑にスニーカーをかかとで潰すように履いて玄関扉を左手で支える。

そして、空いているもう片方の腕で私の腰を強引に引き寄せて言った。