泣かないように、ゆっくりと息を吸い込めば、一条部長が静かな声で話す。


「部内恋愛は禁止だよ。掟を守れないなら、退部か、掟に従うなら別れるかだけど……どうする?」


張り詰めた空気の中、どちらかを選べと促されて、私は唇を噛み締めた。

二ノ宮と秘密を作ったあの日から、恐れていた結末。

とうとう訪れてしまったそれを前にして、私の心が絶望でいっぱいになった。

でも、悪いのは掟に逆らう道を選んだ私たちだ。

あの時、もっと早く三輪君の存在に気づいて彼が扉を閉めるのを止めていれば、こんなことにならなかっただろうか。

そもそも私が指輪を無くしたりなんかするから閉じ込められるハメになった。

今思えば、二ノ宮からもらった指輪を落として無くすなんて縁起が悪い……等と、後悔しても仕方ないことはわかっている。

今はそんなたらればに振り回されるのではなく、どうするのかを考えなければ。

きっと、部長からすればあってはならない私の恋を身勝手に守る為に。

そう、心を強く持った時、二ノ宮が「そもそも」と声を発した。


「その掟自体がおかしいんじゃないかと思うんですけど」

「……例えばどこが?」

「確か、掟ができたのって過去に色々と問題があったからですよね」


二ノ宮が言う過去とは、数年前の話。