何か、何かいい方法はないのか。

部長は頭のいい人で勘もいいから誤魔化せるとは思ってなはいない。

それでも、この窮地を脱する為に必死に頭を働かせてみようとする。

でも、私たちを見下ろす瞳の厳しさに焦って何も浮かばない。

しかも、部長はまるで全てを見抜いているかのように首を傾げて。


「それとも、言い訳でもする？」


少し意地悪な言い方をした。

そこで始めて一条部長が本当に怒っているのだと思い知らされて、巡らせている思考はさらに鈍さを増した。

逃げるように俯いて、けれど、せめて部長の視線からは逃げないようにしようと恐る恐る顔を上げれば、部長は笑みを浮かべる。

でも、それは優しさに溢れたものではなく、怒気を含んだ黒い笑み。

それに怯んだ刹那──


「俺は言い訳なんてしない」


二ノ宮が不機嫌そうに言って、私は固まった。


言い訳をしない、なんて……付き合ってると認めてしまうの？

秘密を打ち明けたら、終わるのに。


ねぇ、二ノ宮。

終わっちゃうよ、私たち。


喉から出かけたその言葉をどうにか呑み込んで。

すがりつきたくなる衝動をどうにか抑えて。

鼻の奥がツンとなって、唇を引き結んだ。