指名された二ノ宮は練習の輪から抜けると監督がいる場所まで軽く走る。

監督も少し歩み出て二ノ宮を迎えた。

ふと、三輪君を見れば、彼はドリンクを飲み干したのか、中身を確かめるようにボトルを揺らしている。

おかわりが必要かと、予備のドリンクを手に三輪君に手渡したと同時、耳に入ってきた監督の声。


「お前に大学からスカウトの話がきてる」


それは、二ノ宮にとってとてもいい知らせ。


「え……本当ですか?」


いつもより弾んだ声で答える二ノ宮の声に、私の心まで踊り始める。

2年ですでにスカウトの話が来るなんて、かなり期待されているんだろう。

自分のことのように嬉しくて、思わず頬を緩ませた私は目の前の三輪君の表情に気づいた。

眉間に深い縦ジワを浮かべて、渡したばかりのボトルを強く握る三輪君は、低い声で呟く。


「……んと……うざい」


その瞳は、底冷えするように暗く、私の心は言い知れぬ不安に震えた。