「まあ、色々大変だろうけど、マネージャーやってる美羽、私は結構好きだよ」
柑菜は……というか、男バスの部内恋愛禁止については、冬高にいれば大体の生徒は知っている掟だ。
だから、男バスにいる男子に恋する女生徒は、どんなに側にいたくてもマネージャーになるのだけは避けている。
私は、兄の影響もあり、バスケ男子をサポートするぞと入学前から決めていたのだけど、まさか部員に恋をするなんて微塵も危惧していなかった。
でも、じゃあ恋をするとわかっていたらマネージャーはやらなかったのかと聞かれれば、答えはノーだろう。
中学の時、高校生である兄の試合を見て、男子バスケならではの迫力に圧倒され、心が震えた。
ベンチに入り、成長を間近で感じられたらどんなに感動するだろう。
叶うなら、高校バスケのトップを目指す選手たちをサポートしたい。
その気持ちは、揺らがなかっただろうから。
そしてそれは今も変わらず私の中にある思い。
「うん。私、マネージャーとして部のみんなをサポートできるの嬉しいんだ」
だから、選べなかった。
二ノ宮と付き合う時に、退部するという選択肢を。
きっと二ノ宮も同じなんだろう。
バスケへの思いは、簡単に捨てられるものじゃない。
だから、大変だとわかっていても……
私たちは、隠すことを選んだ。
きっと、大切なものほど、その大きさに比例して大変なのだろう。



