「あー、あー、空気が重苦しいです、ドーゾ?」

「なんでトランシーバー」

「軽くしようとしたの。何? 美羽も悩みごと?」


私で良ければ聞くよ。

微笑まれて、私は心の中で二ノ宮に謝る。

本当は、ずっと思っていたのだ。

柑菜にだけは、打ち明けたいって。

親友である彼女には、隠し事はしたくない、と。

二ノ宮の許可なく話してしまうけれど、彼にはあとでしっかりと謝ろう。

そう決意し、私は「あのね」と彼女にだけ聞こえる声で二ノ宮と付き合っていることを伝えた。

直後、柑菜は嬉々としてこちらへと身を乗り出す。


「おお!マジですか!」

「ごめんね、話せなくて」

「いいよいいよ。仕方ないんだし。でも、いつから? そしてどこまで進んだのっ!?」


小声ではあるけど、楽しそうに私を質問攻めする柑菜に、ずっと私の中にあったしこりが溶けていくのを感じた。

ようやく、伝えることができたのだ、と。


「付き合い始めたのは修学旅行のあとからで、とりあえず、ひと通りは……って、なにこれ凄く恥ずかしい!」


柑菜と恋バナできるのが嬉しくて、うっかり正直に答えてしまった。

ちょっとだけ顔が熱くなって、両手で頬を覆うと彼女は空になったお弁当箱を片付けながら笑う。