「ふわぁ~あ」


9月に入り、ゆるゆると夏休み明けの学校生活に慣れ始めたある日のお昼時。

教室の片隅で一緒にお弁当を食べている柑菜が大きく欠伸をしたのを見て、私は首を傾げた。


「どうしたの? 寝不足?」

「や、昨日さ、恋愛相談受けてて」


聞けば、どうやら柑菜は昨夜遅くまで、クラスメイトである女友達の悩みを電話口で聞いていたらしい。

普段の就寝時間をオーバーし、日付けが変わってもしばらく話し続けていた為、睡眠時間が足りなかったようだ。


「なんかその子、わけありで内緒で付き合ってるんだけど、疲れてきたみたいでさ」


生徒達の話し声や笑い声で賑やかな中、柑菜の声がやけにハッキリと聞こえた気がするのは、彼女が明かした相談内容があまりにも自分に似ていたから。

いや、私は疲れてるわけじゃないけど、コソコソしないといけない故のストレスは感じている。

私もいつか、それに疲れてしまうのか。

ゼロではない可能性に怯え、購買で買った紙パックのアイスティーを飲みながらつい溜め息を吐く。

すると、目敏く気づいた柑菜が私と同じく購買で購入したミルクコーヒーの紙パックを右手で持って口元に近づけた。