──目覚めてはじめに感じたのは、呼吸音。

ぼやけた視界に映るのは……


穏やかな寝息をたてる

大好きな人の、あどけない寝顔。


意識が徐々に鮮明になっていくにつれて、昨夜のことを思い出し、一人、赤面する。

いわゆる、大人の階段をついに登ってしまったわけだけど、こんな……こんなの、奇跡みたいだ。

3ヶ月前までは、ただひっそりと想うことしかできなかった二ノ宮と、抱き合って眠るなんて。

いつかこの幸せのツケが回ってくるんじゃないかとつい不安になった時、眠る彼の呼吸にうっすらと声が混じり、その瞼が震えた。

ゆったりとした動作で瞳が開き、私を認識すると、蜂蜜みたいに甘くとろりとした目で見つめた。

その柔らかな微笑みに、私の鼓動が大きく跳ねる。


「おはよ」


寝起き独特の掠れた声に、胸を高鳴らせつつもおはようと返せば、互いの足を絡めるようにして抱き締められた。

昨日、彼に抱かれたせいか、伝わる体温がひどく愛おしい。

もっと感じていたくて、猫がすり寄るように二ノ宮の胸に顔を埋めると、額にそっと口づけが降りてくる。

昨日から続く幸せな時間に、胸が締め付けられて、私は微笑み、短い息を漏らした。