「えっ、どこが」
これには驚いて目を瞠り、思わず彼の顔を覗き込む。
すると、二ノ宮ははにかんで、照れているのかその顔を隠すようにまた私を引き寄せた。
「バレないようにしてるだけ。桃原の前ではかっこつけてたいんだよ」
その言葉に、緊張しているのは私だけではないんだとわかり、ようやく少し肩の力が抜ける。
それが彼にも伝わったのか。
「……解れた?」
柔らかい、気遣うような声で聞かれて私は頷く。
「うん、少し」
全部とはいかないけれど、彼が私と同じでいてくれているのなら、それでもかまわない。
そう、思えるようになった時。
「桃原は、後悔してる?」
突然尋ねられて、私は「何を?」と聞き返す。
「俺と付き合ったこと」
どうしていきなり……と一瞬疑問に感じるも、それが別に唐突なものではないことに気づいた。
昼間、思いがけない展開に冷や冷やしたばかりなのだから。



