あの子と出会ってから少したったある日だった。
その日の夕方、僕はあの子に帰らないでほしいと願ってしまった。
その時真っ黒な腕が何本も何本も現れてあの子の体を引っ張った。
痛い、止めて、というあの子を僕は見ていることしかできなかった。
そして、あの子のからだからぼとりと真っ赤に染まった眼が2つ落ちた。
そして、あの子の耳は真っ赤になっていた。

僕の耳にあの子の悲鳴が響くまで僕は事態を理解できなかった。




僕はあの子の目と耳を奪ってしまったのだということを。