その子は家に来た。
たどたどしく鳴らされるへたっぴなベルのおとに僕はワクワクしながらドアを開けた。

その子は女の子だった。
僕と同じくらいの年だ。
迷子になった、そう彼女は泣きながら言った。
ママに会いたいと溢す彼女は少し前の自分のようで、僕は彼女を助けたいと思った。
頭の中に浮かぶ地図、見たことのない景色を思い出しながら、僕は彼女を家まで案内した。
このとき能力がなければ僕まで迷子になることだったろうに、と今は思う。

その時つい言ってしまった「またね」が後の僕を困らせることになる。