好きな人が現れても……

好きだという気持ちだけではないかもしれない。
紺野君の言うように、同情みたいな思いも少なからずあるかもしれない。


「横山は人がいいからな。頼まれると断れないし、そいつもそんな性格を知ってるから頼んできたんじゃねえのか?」


乗せられるなよ…と言い渡され、流石にムッときてしまった。

普段から喜怒哀楽の出難い顔だけど、唇を突き出して頬を膨ませた。


「紺野君の言い方ってあんまり酷い!折角頼ってくれてるのに、そんな風に取るなんてサイテー」


声を上げて椅子から立つと、私はテーブルから離れようとした。
驚いた紺野君が、おいっ!と声をかけ、それを聞かずに逃げようとして通路へと歩き出た。

ドン、と歩いてきた人にぶつかる。
ぶつかられた人は、わっ…と驚き、その声にビクッとなって顔を見上げた。



「……横山さん」


紛れもなく話の中心人物が現れ、私はぎゅっと唇を噛んだ。
課長は怒ってる私の顔を見つめ、それから後ろに立ってる紺野君を見た。


「野村課長、丁度いい。横山を止めて下さいよ」


何を言いだすのだとギョッとする。
呆れ顔の紺野君は、課長にこう言った。