好きな人が現れても……

「おう、久し振り！」


一緒に食べようと言ってくる。
杏梨ちゃん達は「二人でどうぞ」と言いだし、燥ぎながら逃げ出す。


（なんかやっぱり勘違いされてる……）


これはホントに早く断っておかないとマズい。
私は紺野君と窓際の席に着き、出張お疲れ様…と言いながら話しだした。



「丁度良かった。私、紺野君に話があるの。金曜日に言われたことの返事なんだけど…」


私の言葉に紺野君の表情が強張る。
緊張してるのが手に取るように分かって、ごくっと生唾を飲み込んだ。


「紺野君の気持ちは嬉しかったけど、私やっぱり他の人に自分の気持ちを向けるとかムリみたいなの。
些細な言葉一つでも嬉しくなったりするのって、あの人だけ。他の人じゃダメなの……」


言うと安心して、フッ…と短い息を吐いた。
紺野君は何となく予感してたのか、終始無言で聞いてた。


「あの……理解できた？」


お弁当の入ったバッグの口も開けずに窺うような目線を送る。
紺野君は小さな声で、ああ…と言い、不機嫌そうにそっぽを向いた。