好きな人が現れても……

「……横山もか。俺言ったよな。不倫なんて誰も幸せになんてならねえって」


聞いてなかったのかよ…と呟く彼から目を伏せ、「そうじゃないの」と答える。


「だって今…!」


「違うの。私がいいなと思う人には奥さんがいたんだけど……亡くなってるの……」


そう言って顔を上げると、紺野君はキョトンとした顔つきでいて。



「……亡くなってる?」


聞き返してきた声に頷き、「そう…」と付け足す。

最初の取っ掛かりを話すと、気持ちは少しだけ上向きになった。
頼んでたオレンジフィズを一口飲んで、フワン…となった気分で続きを話した。


「奥さんは亡くなったけど、子供さんがいるって聞いてる。私が好きでいることもその人は知らないし、そもそも、きっと眼中には入ってないと思う」


そう言葉にすると落ち込む。
当たり前のことが実感でき、不毛な恋をしてるんだと気付かされる。


「だけど、私…その人のことを諦めきれなくて。今はムリでもいつかは私のことを見てくれないかな…って思ってるんだ…」



「無理だろうな」