「四ノ宮杏梨(そのみや あんり)ちゃん。私と替わって席に来た子がいたでしょう?」


「ああ、あの明るい子か。誰にでも愛想が良かった奴な」


奴なんて言うけど女子だ…と思いながらも、そうその子…と頷く。


「親睦会の前にあった合コンでも会ってるでしょ。印象に残ってなかったの?」


杏梨ちゃんは甲斐甲斐しく働いてたのに。


「あー、あの時は気力もなかったからなぁ。そもそも嫌々に行った合コンだったし、女子は暫く要らねえや…とも思ってたしな」


蒸し返すなよ…と言われ、そう言われても…と呟く。
紺野君は注文した焼き鳥の皿が届くとそれに手を付け、今夜は俺の話をしに来たんじゃねえだろ…と言いだした。


「今日は横山の話を聞くって言ったろ。昼間のあの酷い表情は何だよ」


仏頂面もいいところだったと指摘され、それはいつもだと言いたくもなる。


「私の話はいいって言ったじゃない。誰かに話しても仕方のないことよ」


ほっといて…ともう一度言えば、ビールのジョッキを煽った彼が、トン!と底を打ち付けるようにして置き直し、真剣な眼差しで私のことを見つめた。