キュッと脇を閉じてもう一度頭を下げ、踵を返してドアを開けて出る。


さっさと歩いて逃げるのが嫌だ。
この幸せを感じたまま、いつまでもドアの前に立ってたい。




「……そんな訳にもいかないか」


紺野君との約束があった。
今更だけど、無ければ良かったのに。


話を聞いてくれると言った優しい同期の顔を思い出し、そう思ったらダメか…とも反省する。

歩き始めながら胸の奥では課長の笑顔を思い浮かべ、寂しくなる気持ちと混ざり合わせながら息を吐いたーーー。