(そうか。今夜勧めてみればいいんだ)


杏梨ちゃんは彼のことを気に入ってたし、あれからは何も言わないけど、私が二人の接点だとしたらプッシュしてみたい。

少しお節介かな…とは思うけど、周りの人達がハッピーになるのを見るのは嬉しい。


それなら紺野君と飲む意味もある。
嫌々ながらではなく、きちんとした理由にも繋がる。


拒否したい気持ちに何とか理由を見つけだして仕事をこなし続けた。
少しだけ残業をして庶務課を出ようとしたら、課長はまだ事務処理を続けてる。


もうすぐ七時になるのにいいのかな。
お子さんはパパの帰りを待ってるんじゃないの?

仕事をしてるんだから仕方ない…と諦めさせてるんだろうか。
もしも、そうなら何だか可哀想だけどーー。



「課長……」


何気なく声をかけてしまった。
自分が仕事を代われる訳でもないのに。


「ん?何だ?」


顔を上げた課長と目が合い、ドキンと心臓の音が跳ね上がる。


「い、いえ。お疲れ様でした。お先に失礼します」


声が震えそうになるのを必死で誤魔化しつつ頭を項垂れると、課長は目尻を下げて「お疲れ様」と言ってくれた。