自分のことを振り返りもしない彼に息を吐き、飲むなんて気分でもないのに…と諦めてしまう。

クルッと背中を向けて歩き始めながら、そう言えばあの親睦会の夜に席を替わった杏梨ちゃんとは、話くらいしたんだろうか…と思い出した。


週明けの月曜日、杏梨ちゃんは紺野君のことを何も言ってなかった。

始まる前は彼とお話ししたいと言ってた割には、その報告は何も受けてない。

どういうこと?と思う疑問が生まれ、一時、自分の悩みなど忘れて庶務課へ入ると、杏梨ちゃんはコピーされた会議資料を纏めてる最中だった。

彼女はいつもきちんと髪を巻いてる。
手抜きなメイクをしたところも見たことがないし、明るいローズ系のルージュは、彼女のクリーム色の肌にも合ってる。

とっても女子力に溢れてる杏梨ちゃんは、性格もハッキリしてて明るくて楽しい。
多少ワガママなところも見受けられるけど、彼女にしてみれば?と、紺野君に紹介したくなる程の女性だ。


紺野君の元カノがどんな人だったのかは聞いたことも見たこともないけど、好みが合うのなら付き合ってみればいいのに。