その自信は持ち合わせてもいないけど、あの指輪が目に入る限り、私はずっと野村課長のことを好きでいそうな気がする。


課長の目に留まってどうにかなりたいとかじゃなく、あの視界に入れて貰って、一瞬だけでもいいいから独り占めしてみたい。


家に帰れば奥さんの遺影を幾ら拝んでも構わない。
だけど、オフィス内では今日のように私のことを間近で見てくれたなら……。


ぎゅっと握ったハンカチの湿り具合が、今の課長の気持ちのような感じがして、彼の心が乾いていく一つの手段として、自分が役に立てたら嬉しいのに…と思った。