「その話を誰に聞いたの?もしかしてとは思うけど、野村課長本人から?」


そのハンカチももしかして課長の?と問われ、少し疑い深そうな目を向け、ん?と首を傾ける。


私は大きく鼻水を吸い上げ、「そ…です」と声を詰まらせた。

相川さんはテーブルの反対側から目を見開き、パチッと瞬きをして口を閉ざす。
少しの間、そのまま目を伏せて考え込んでたんだけど、不意に「そおか」と納得した。


「やっと人に話せるくらい気持ちが落ち着いてきたのかな。丸三年以上かかったけど、やっとか……」


しみじみと囁いてから、金曜日は葉月が奥さんのことを大きな声で煽ってたから焦った…と、コロリと雰囲気を変えて話しだす。

私は何も知らなかったからです…と話し、知ってたら言いませんでした。きっと…と続けた。


「そうかしらね。案外と言っちゃってたりして」


「い…言いませんっ!」


まさか…と声を上げそうになると、相川さんはそれくらい酔ってた…と弁解した。


「ごめん。葉月をあそこまで酔わせたのは私の責任でもあるから気にしないで」