……だけど、それ以上は彼に深入りしない。

その理由はちゃんとあって、それを理解してるからこそ、私も彼に片思いをしてるだけに留まってるのだ。




「横山さん、ちょっと…」


呼び出しを受けてデスクに向かう。
仕事の指示を受けながらチラリと見てしまう左手。

薬指に嵌められたプラチナが彼を他人のものだと語ってる。



「……こういう感じでグラフ作成よろしく」


「はい」


資料を受け取りながらデスクに戻る。


あのプラチナリングの相手には敵わない。
勿論、あの愛妻弁当にも絶対にーー。



(好きなんだけどな…)


学生時代以来の片思いを始めて一年以上が経つ。

これからも、きっと振り向かれたりしないのだーー。