しかし、やはり課長には謝っておきたい。
部長との会話に土足で踏み込んで、管を巻いたことには違いないのだから。



「葉月、行くよ」


杏梨ちゃんの声に「先に行ってていいよ」と答え、覚悟を決めて課長のデスクに向かおうとした。

だけど、課長は自分のバッグからいつものようにランチケースと水筒を取り出し、それを手にさっさと庶務課を出て行く。
慌てて自分もデスクの上に置いてたお昼ご飯の入ったミニバッグを持って追いかける。

なるべく人目がいない所で声をかけようと思いながら、背中を見失わないようにある程度の距離を保って歩いた。


課長の足が社食に向いてないと気づいたのは、エレベーターの前を突っ切り、階段の方へ向かい出した時だ。
何処へ行くつもりだろう…と思いながら早足で追いかけ、階段を上って行く後ろ姿を見かけた。

首を傾げながら足音を立てずに上る。
課長は庶務課のある三階から屋上のある十階までを一気に休むことなく上りきった。


ゼーハー…と息を切らして上りきった私は、課長が開けて出て行ったと思われる屋上のドアの前で深呼吸。