杏梨ちゃんはそれ以上私に何かを言ってくることはなく、それはそれで何かイタイ事をしでかしてるからだろうかと勘繰る。


始業時間ギリになって課長が慌てて出勤してきた。
チラッと目線を向けると、遅刻しそうになってたくらいだから、ヘアスタイルも服装も乱れきってる。

寝ぐせの付いたままの側頭部を見つめ、課長の奥さんは今朝も寝坊か何かをしたのだろうかと歯痒くなった。


金曜日の部長との会話で、課長には子供がいるのだとういうことは確定的。
何歳かは知らないけど子供もいるんだからしっかりしてよ、と言いたくなってくる。

自分には絶対に向けられない愛情を受け取り、幸せに暮らしてるなら尚更頑張って欲しい。


自分の取った大人気ない行動は棚に上げ、私はそんな気持ちを抱えたまま午前中の仕事をこなした。


お昼休みになり、いつものように社食に誘われた。
金曜日のことを誰もが突っ込んでこないところを見ると、私は大したことを言わなかったのかなぁ…と、重くなってた気分も多少は軽くなり始める。