三人で実家に遊びに行った時も、急に増えた孫娘の様な存在の真央ちゃんから気に入られ、彼女に甘えられるのを喜んでた。


母も姉も遠くに住んでる兄までもが、私の選びそうな相手だと言って笑った。

普段はクールだけど怒らせたら怖い子からね…と、彼にあれこれ教え合っていた。



庶務課の皆に課長と付き合ってるのがバレた時、杏梨ちゃん達はスゴく驚いて、「不倫してたの!?」と私を責めた。


「そんな恐ろしいことしてないよ!」


奥さんが亡くなってることも、子持ちだということもその時に話し、皆からはええー!?と驚かれた。

 
「でも、それなら課長がエンゲージリングを外したのも分かる。きっと葉月と付き合いたかったからなんだね」


それにはなんと答えていいか迷った。


実はあのリングは思わぬ事故で失くしたのだ。
正確に言うなら、流されていったと言うべきか。


彼が真央ちゃんと一緒にお風呂に入ってる時、それを身に付けて遊んでた真央ちゃんが泡の付いた手から滑り落とし、見事に排水口に転がしてしまった。

うっかりゴミ受けをセットし忘れてた彼は、娘の失態を怒ることも出来ずに、流れてしまったものは仕方ない…と諦めることにした。