視線を向けると切なそうな横顔が見える。
泣き出してしまうんじゃないかと思えて、きゅっとその袖を摘んだ。


何?と振り返った彼が首を傾げる。

何でも…と答える私に寄ってきて、そっと頬にキスをした。


ドキン…と胸が弾んで見返す。

彼を慰めるつもりが、反対に慰められてしまった。



「俺達も挙げような」


年が明けてから…と約束している。
急がなくてもいいと言うのに、彼の方が急ぎたいと願った……。



お盆休みに、子持ちの上司と付き合ってます…と実家へ報告に行ったら、父に大反対された。


「もっといいのが他にいるだろう」


止めておけと叱られ、それでも頑固な私は引き下がらずに認めて欲しいと願い続けた。


「そこまで言うなら条件がある。結婚するまで一緒に住まないと約束できるなら認めてやろう」


よくよく考えてみればそうだった。
私の頑固は父親譲りだ。


「離れて暮らし続けるなんて地獄だ」


課長はそれを聞いてガッカリしてた。
だけど、お互いの部屋に泊まったらいけないとは父も言わない。