好きな人が現れても……

丸い粒が光って煉瓦ブロックの上に落ちてくのが見えた。
泣いたらダメだと思うのに、どうしても溢れてくる。

課長が私のことをやっと受け入れてくれた。
譲れない…とハッキリ声に出してくれた。


まだ信じれないけど夢じゃない。
だって、後ろ手に回された手があったかいからーーー。



「俺、帰ります。横山のことよろしく頼みます」


踵を返した紺野君が走り去る音を耳にして、更に涙が込み上げた。
同期の彼の優しさに一頻り泣いてると、課長の腕が離れていった。


「横山さん…」


上から降り注ぐ声にビクッとして見上げる。
課長は後ろを振り向くような体勢でいて、少し照れ臭そうに微笑んでた。


「もしかして、さっきのことを見てたのか？」


紺野君に話しかけられる前に発した言葉のことだろう。
コクン…と頷くと、そっか…と溜息を吐かれた。


「マズいな。相川さんに叱られるかもな」


そう言うとシャツを握ってる手を離させ、そのまま自分の手で包んだ。


「何処かで理由を教えたいんだけど、このまま家に行ってもいいか？」


「…うち？」