好きな人が現れても……

以前、彼のことが好きだと言った時、彼女には好きな人がいそうだな…と思ったけど、それは課長のことだったの？

ホントは自分の心を隠して私に頑張れと言ったのか。
応援なんてしたくないのに、部下だからと同情でもされたの……？


三人が揃って向かう場所って何処なの。

もしかして、課長の実家？

何の為に？
ご両親に相川さん達を紹介する為……？



頭の中が真っ白になって、杏梨ちゃんのことと重なった。
決まってもないのにそんな風にしか思えず、俯いたままで更衣室に向かい始めたらーー

トン…と肩がぶつかって、ごめんなさい…と顔を見上げると、そこに居たのは同期の彼で、その視線は紛れもなく私のことを見下ろしてた。



「横山…どうかした？」


社屋を出ようとしてた彼は、制服姿で額に汗してる私が外から入って来たのをおかしく思ったようだ。


「何でもないよ。紺野君はもう帰り？」


「ああ…そうだけど」


上から答える彼の目線が私のことを見据える。
何も悟られないようにしよう、とこっちはわざと気を張り詰めた。


「そうなんだ。いいね。私はまだこれから残業よ」