好きな人が現れても……

それを見ながら、親子というのはいいな…と思った。

永遠に途切れることのない縁で結ばれた関係。
私も真央ちゃんと同じ立場なら良かったのに……。


ソファの横をすり抜け、背中を向けてリビングを出ようとする彼を見つめながら、相川さん親子のことを思い出した。


彼女がしみじみと言ってた言葉が脳裏を掠めて、さっきの課長の様子と重なった。



『……どんなに好きになっても伝えられない思いってあるわよね…』



もしかしたら課長もそうなんだろうか。
言いたくても言いだせない言葉があって、さっきはそれを飲み込んだの?


私だけでなく、周りの人達にも同じように言わずにいるの?
一人でそれを抱え込んで、ずっと言わずに生きていくつもり?


いつから胸にしまってる?
二度と吐き出さないでいるつもりなの?


考え込んでるところへ課長が戻ってきた。
ホントなら直ぐにでも帰らないといけないとは思うけど……


「課長……あの、もう少しお話伺ってもいいですか?」


課長の深い気持ちが知りたい。
何を飲み込んで生きてるのか、私に話して欲しい……。