好きな人が現れても……

驚く声にハッとして視線を向けると、横山の膝枕でスースーと寝息を立てる娘の姿があった。

ついさっきまで楽しそうに二人で会話していたのに。


「…すまない。ベッドに運ぶよ」


そう言って近付こうすると、彼女は慌てて俺を制した。


「いいです。このまま少し寝かせてあげて下さい」


真央の顔にかかった髪の毛を避け、汗びっしょり…と呟く。
確かに子供好きなんだな…と思え、それは少し嬉しかった。


タオルを持っていくと、首や額を拭いてやってる。
まるで母親のようだと思え、直ぐに、違うだろ…と自分に言い聞かせた。



その途端……胸が凄く痛んだ。
昼間のことを謝るには、今しかないと感じた。



「……横山さん」


声をかけるとビクッと手が止まり、俯いたままで、はい…と返事がある。

その声に目を向け、とにかく謝ろうと向かい側の椅子に座った。


横山の視線が前を向き、恐々といった雰囲気で見つめてくる。動悸を感じてはいるが、多分向こうも同じだろうと思う。


「……ごめん。昼間はどうかしてたんだ。あんなことをして……申し訳ない」