(止めて……私は違う…!)


顔を振っても終わらない。
返って激しさを増すばかりだったーーー。




「課長………酷い……」


溢れた言葉に口ごもった。


酷過ぎる。
私を奥さんみたいに思うなんて。


亡くなった人と重ねるなんて、一番して欲しくなかった……。



ボロボロと涙が溢れ出して、また止まらなくなってしまった。
水に溶けてしまうけど、トイレットペーパーをグルグルに巻き取って顔に押し付けた。




声を殺して泣き続け、午後の始業に遅れてしまった。
私よりも課長はもっと遅くて、だけどその顔色が悪かったから、誰も何も言わないでいた。



私が庶務課を出る頃、課長はまだデスクに着いてた。
視線を避けるように、午後はずっと俯いたままだった。


小さな声でお疲れ様でした…と言い、力なくドアを閉めて更衣室へ向かった。

ロッカーの小さな鏡に顔を映して、自分も酷い顔をしてたんだと実感した。



「葉月、ずっと顔色悪いよ」


青ざめてる…と杏梨ちゃんが心配する。
そう言えば課長もだったね…と言うから胸がひどく鳴ってしまった。