今の課長はおかしい。朝からずっと様子が変だった。
このキスだってきっと、私にしてる訳ではないんだ…と感じたーー。



やめて!と思いながら、力一杯伸ばした腕の先に彼がいて、頬を蒸気させたまま私のことを見てる。

自分が何をしたのかも実感されてない様子で、それが悲しくて、涙が溢れた……。


一粒零れ落ちたら、堰を切ったように溢れ返ってしまい、課長のことを怒鳴り付けてしまいそうな気がして、慌ててあの場から走り去った。



あの後、課長は?
私を追いかけてくる気配もなかったけど……。



(…まさか、自殺なんてしてないよね?)


私が拒んだから…という理由だけでそれはないよね。
だって頬に触れた時も、髪の毛を掬い上げた時も、きっと別の人のことを考えてた筈だから。



朝からずっとそうだったもの。

遠い目をしてる課長を観察しながら、週末に何かあったのだと確信した。
何もないと言ってたけど、それは絶対に違う。


だって、課長の表情にはまるで生気がなかった。
別人のような顔つきで、目は虚ろで彷徨ってた。