コツ、コツ…とゆっくり階段を上りつめ、外へ出るドアノブに手をかけた。




「課長…」


ビクッと声に反応する。
ちらっと振り向けば、やっぱり彼女だ。



「どうした?」


腑抜けた声を発する俺に近寄り、言い出しにくそうに口籠もった後、やっぱり言おうと決めたのか、唇を開いた。



「あの……どうかしたんですか?」


朝と同じく心配そうな顔つきだ。
俺の様子がおかしいと、ずっと様子を見てたのだろうか。


「何もないよ。横山さんの考え過ぎ」


ドアを押し開くと眩しい光と熱を感じる。
その光の中に飛び出し、熱によって溶けてしまいたいとさえ思う。



「…待って下さい!」


ガシッと腕を握って止められた。
驚いて振り向けば、間近に横山の顔があった。


目を見開いて必死な表情をしている。
彼女の方こそ何かあったのではないかと思うような顔つきだ。



「…横山さん?」


声をかけるとハッとして、どうやら我に戻ったらしい。
ぎゅっと握られてたワイシャツの袖を離しそうになり、それでもやっぱり離さずにいた。