ドン!!と拳でテーブルを殴った。

千恵への八つ当たりでも、不甲斐ない自分への後悔でもない。



ただただ、時間が経っていくのが悔しくて。

何もしなくても、周りが変わっていくことが寂しくて。


誰にも頼らず、誰のことも当てにせず生きようとしてるのに、周りからは色々と手を貸されることが切なくて。


その度に自分一人では生きていけないのだと教えられて。

認めたくないけど、甘えたくなる自分がそこに居る。


父親なんだからもっとしっかりしなくてはいけない。

親は俺だけなんだから真央のことをずっと見ておかなくてはいけない。


そう思えば思うほどウンザリする気持ちも何処かにあって、それに支配される日が来るのではないかと慄くことだってある。


素直に助けられることも出来ずに、ぶつけられる気持ちからも逃げ出そうとする。


俺では誰も幸せにすることなんて出来ないから。

たった一人、愛した女性でさえも守れなかったのだから……と。




「……っうう……」



漏れ出た嗚咽に慌てて口を塞いだ。

こんなに涙が溢れた日など、千恵の葬式以降なかったのに。