『貴大さんへ


この手紙を読んでいるということは、私が亡くなってから丸三年経っても独りでいるってことよね。

莫迦な人。一体いつまで私のことを思ってるの?

いい加減に前を向いて歩いてよ。私はもう貴方がいる世界には住めないんだから。』



強い口調で始まった手紙を何かの間違いではないかと疑った。



これは本当に千恵が書いたものなのか?
実際は誰かの代筆じゃないのか?


目を擦って見直したが、どう見ても文字は千恵のものだ。
間違いないのかと思い直し、手紙の続きに目を遣った。



『これは妊娠二十週目に書いてます。病院のベッドの上で、やっと少しだけ気持ちの余裕が生まれたから。

私の妊娠と病気が同時に判って、貴方の心にも暫くの間、闇が広がってたわね。

私は妊娠の継続を望むのに、貴方は反対してばかりだった。

……だけど、最近はやっと諦めてくれて嬉しい。

時々だけどお腹をさすって、喜んでくれるのが有難いです。


産むことを許してくれてありがとう。

多分きっと何度もお礼を言ってる筈だと思うけど、また伝えておきます。