好きな人が現れても……

ゴクン…と飲むビールの苦味を味わいながら、帰る前に義母から手渡された手紙の存在を思い出した。


真央と揃いのエプロンを入れたビニール袋の中から取り出し、ソファの前にあるガラステーブルの上に乗せた。
さほど厚みもない手紙だったが、何故か重々しく感じる。


暫く表の文字を見つめて迷った。
読むべきかどうか、読んでもいいのかどうかと考え込んでいた。


視線をピアノに向け、どうすればいい?と千恵に訊く。
当然返事もなく、読めば彼女の意思に触れるのかと考えた。


口を留めていた小さなシールを剥ぎ、三角形の口を上に向ける。
封筒と同じパステルブルーの便箋が見え、指先を滑らせて引き抜いた。


四つ折りされた紙は三枚。
開くとその文字は時々乱れ、所々滲んでる。

これを書きながら千恵が何かを思い、迷い、そして涙を浮かべたのだ…と理解した。


心して読まなくては…と腹を括った。

書き出しは俺の名前で始まっていたーーー。