好きな人が現れても……

タクシーに乗る前、紺野君は私にこうも言ってた。


「不倫なんてしても誰も幸せにならない。横山も止めておけよ。そんな相手に言い寄られるなよ」


妹を心配する兄のような目をしてた。
私には兄と姉がいるけど、もしも私が不倫をすれば、きっと二人は今の紺野君のように止めるだろう。


「しないよ、そんなこと。それよりも早く立ち直って次の彼女探して」


バイバイと手を振って出発してもらった。

紺野君の話は胸の奥底を抉って、嫌な思いでいっぱいになっていた。



私の片思いは誰も祝福をしてくれない。

祝福どころか、神様までもが止めなさい…と言ってるみたい。


思わない方がいいのだ。

思ったって実らないし、実ってもきっと誰もが不幸になるーーー。



ぎゅっ…と胸の奥を掴まれるような話に、折角心地よく酔ってた雰囲気も全て台無しにされた。


涙にくれてた同期生が一日も早く元気になることを願いながらタクシーに揺られて帰った……。