食べ終える前から眠そうだった美杜ちゃんは、小さな子供のように手を上げてせがむ。

仕様がない子…と呟いて抱き上げた相川さんは、美杜ちゃんを背負ってから私に優しい声で話した。


「迷惑だと言われてもめげないで気持ちを伝えていきなさいよ。私が見る限り、野村さんも葉月のことを多少は気にしてると思うわ」


紺野君と同じく頑張って…と言って歩き出す。

力強くて時に厳しい人だけど、相川さんはやっぱり優しくて愛に溢れてる。


ひょっとしたら、誰か好きな人でもいるのかなとも思ったけど、きっとそれを考えないようにしてるのだ。



『……どんなに好きになっても伝えられない思いってあるわよね……』


いつだったか聞いたことのある言葉の意味を、今夜はつくづくと考えさせられた。



去って行く二人の背中を見送ってから駅に向かった。

やっぱり明日からもめげずに課長のことを助けていこう…と強い気持ちが新たに芽生えたーーー。