好きな人が現れても……

「最初は独身かと思ってたんだって。指輪もしてないし、やたらと言い寄ってくるから。
それでも俺のこともあるし、誘いには絶対に乗らないと決めてたそうなんだけど、いつの間にか気持ちに擦り寄られた…って弁解してたな」


気付けばその上司と体の関係になってしまってて、恋は盲目の言葉通り、彼以外の人は見れなくなった…と言われたそうだ。



「……不倫なんてできる奴じゃなかったのに」


その言葉に震えがきた。
今自分がしてる片思いも、それと同じ様な気がしたから。


「俺……暫く女なんて信じれそうにないよ」


ウイスキーをロックで煽りながら紺野君は呟いて泣いた。

下手に慰めることも出来ず、胸の奥がズキンズキンと痛かった。


飲んだ割に酔いきれなかったのか、紺野君は私の為にタクシーを止めてくれて、自分は歩いて帰ると言い出した。


「酔い冷ましながら歩くよ」


泣いてた目が真っ赤で、それがとても痛ましく見えた。
今夜、彼に会ったのは、私に不倫は止めておきなさいという神様からの警告だったのかもしれない。