……また言い逃げてしまった……。
走り込んだ更衣室の中で、私は息を切らせてしゃがみ込んだ。
課長の言葉を正面から拒否るなんてバカだ。
きっと今頃、なんて聞き分けのない部下だと呆れてることだろう。
私の幸せを考えて言ってやったのに……と思ってる筈だ。
(でも、私は課長の為になることがしたいの……)
好きな人の役に立ちたい。
真央ちゃんのお母さん代わりは出来ないけど、パパを少しでも早く家庭に帰すことは出来る。
親子の時間を僅かでもいいから増やせて、それがあの子の笑顔に繋がるならいいと思う。
課長がいなくても、ママがいなくても、面倒を見てくれる人はいるかもしれない。
だけど、それはあの子の望むことではないと思う。
真央ちゃんはきっとパパの帰りが早いことを望んでる。
首を長くして、まだかな…って思ってる。
何だかんだ言ってもまだ四歳だもの。
あんなに元気が良くて男の子みたいなところがあっても、女の子だから。
心細いと思う。
甘えたいと思う。
だから、私はそれを叶えてやりたい。
何も出来ないけど、それを大切にしてあげたい。

